大判例

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名古屋高等裁判所 昭和28年(う)661号・昭28年(う)662号 判決

原判示第一の事実認定に供せられている証拠を調査するに、右証拠中の倉田幸夫の司法警察官並に検察官に対する各供述調書は、原審第三回公判に於て証人倉田幸夫の証言の証明力を争うものとして提出せられたもので、その後審理の更新はあつたが、依然、その反証として提出せられた当初の性格を変更した形跡はないので、原審がこれ等を事実認定の資料としたのは違法の措置ではあるが、原判示事実は、右供述調書二通を除外するも爾余の証拠により充分認定し得べく、即ち、被告人が中部燃料株式会社の代表者として昭和二十三年十二月一日頃政府の集荷機関である岐阜県薪炭林業組合益田支部との間に、受入調書によつて売買契約をしたこととなつている木炭五千二百七十俵は一部は当時まだ裸炭で所定の検査収買の規格に添わないもののあつたことは窺われるが、原審証人倉田幸夫は原審第九回公判に於て、当時原判示小坂町地内には三ケ所に分散せられてはいたが規格通りのもの合計約三千五百俵はあつたと証言して居り、これを爾余の証拠に綜合すると同月二十日頃被告人が木田定吉名義で益田郡小坂町農業協同組合に売渡した木炭三千百十五俵は原判示の通り前記岐阜県薪炭林業組合益田支部と契約し、その所有権は既に政府に帰属しながら、未だ現実の引渡を為さず引続き中部燃料株式会社に於て占有保管中のものであつたことは明白であると共に、所論の如く売買契約に際り特段の意思表示がなされていなかつたとしても、特定物の売買として右木炭の占有保管が同会社の法律上の義務であることは明かで、被告人は会社の機関としてその保管義務履行の責任があるのに、敢てこれを他に二重売買したもので、その横領罪を構成するは勿論であり記録を精査するも原審に所論の如き事実誤認乃至は擬律錯誤の瑕疵はなく、論旨はすべて独自の見解に立つて原審が結局正当になした事実認定や法令の適用を非難するに過ぎないものと認めるの外ないから採用できない。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

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